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手描き友禅の制作工程を写真・動画を交えてご紹介いたします。
当工房では手仕事による友禅にて着物・帯を制作しています。
手描き友禅制作において一番大切な事は「写生」です。
着物や帯は季節に先駆けて制作しなければならない為、図案を描く時に描きたい花が咲いていないこともあります。
そのような時に写生を確認して茎の動きや花と葉の付き方・形の特徴を思い出すことができます。
花や鳥を自然な姿で描くために写生はとても重要です。
また、抽象的な文様も自然を観察する事から生まれます。
当工房は御岳渓谷・奥多摩という自然に恵まれ題材にはことかかない環境にあります。
着物・帯の設計図とも言える図案の制作です。
この工程で作品の良し悪しの8割が決まります。
着物や帯と同じ寸法の線を引いた紙に図案を描いていきます。
「着た時に自然に見える構図」を最も優先して描いていきます。
鉛筆で下描きをした後、墨で図案を完成させます。
これを墨入れと言います。日本画で言う骨描きにあたるものです。
この段階で作家の頭の中にはおおよその配色が決まっています。
当工房では、職人集団による分業制ではなく、1人の作家が自分の作品を制作しているため、
図案に色付けする必要がありません。
柄の配置も同じような色の花や柄が並ばないように考慮して描きます。
手描き友禅の一番の特徴とも言える糸目描き(糊置き)の工程です。
防染剤として用いる糸目糊を円錐形の筒に入れ、
糊を細い線として絞り出しながら、図案の通りに生地へ輪郭を描いていく作業です。
糊が染料の滲みこみのを防ぎますので、染めた後、最後に洗い落とすと白い線として残ります。
この糊で描いた白い線を「糸目」と呼びます。
糸目糊は糯糊が伝統的な材料ですが、当工房では石油由来のゴム糊を使用しています。
湿度や室温に左右される糯糊とくらべ、ゴム糊は扱いやすく糸目糊や地染めも綺麗に仕上がります。
また、糊にデンプン質が含まれていないため虫に食われるリスクも少なくなります。
糸目糊は粘りがあるので、自由自在に柄を描くためには修行が必要です。
染料を生地に食いつきやすくするための処置です。多少のにじみ止めを施す意味もあります。
大豆を水でふやかして、すり潰し、漉した豆乳汁の「豆汁(ごじる)」を使います。
「豆汁(ごじる)」は無色ですが染め上がりの美しさに影響するため細心の注意を払います。
地色にあわせて濃度を調合して使用しています。
反物を全部伸ばして「ガリ」と呼ばれる器具で両端から引っ張ります。
また「伸子」という竹ひごの両端に針のついた道具でシワが出来ないように生地を張ります。
五寸刷毛を使い、端からムラなく均等に豆汁を引きます。
糸目置き、地入れの後、着物や帯の柄に細かく色をつける彩色の工程です。
彩色は小さな刷毛や筆を用いて染料を使い、糸目糊でくくられた柄の内側を細かく彩色します。
正絹は滲みやすい素材のため、色を塗るという感覚ではなく、浸み込みを計算しながら挿す(さす)という感覚です。
染料は原色となる5~6色を混ぜ合わせて調合し、小さな絵皿に一色づつ作ります。
作り置きはせず、お客様の個性やご年齢にあわせて、一色づつ丁寧に調合しています。
当工房の特徴として、透明感と品の良い彩色を意識しています。
振袖など柄の多い着物には約100色程度の色を使用することもあります。
根気と手間を惜しまず、花びら一枚一枚を丁寧にぼかし彩色をします。
様々な色を使用し、着物にまとまりのある全体感を作り出すには豊富な経験が必要で、
糸目糊から滲み出さずに彩色するには熟練の技術が必要です。
地色の引き染めをする際に柄に色が入らないように「ふせ糊」で防染する工程です。
糊を円錐形の筒に入れ、先から絞り出しながら手仕事で糊を置いていきます。
柄からはみ出さないように、かつ、きちんと防染するには技術が必要です。
ふせ糊も糯糊が伝統的な材料ですが、糸目糊と同じ理由から当工房では石油由来の糊を使用しています。
友禅染め、引き染めの工程です。彩色と同様に作り置きはせず、その日使う分だけの染料を混ぜ合わせて地色を調合します。
引き染めの後、「蒸し(色止め)」の工程に入りますが、蒸すことで染料がより発色します。
地色の調合は、蒸し上がりの発色具合を計算して作らなければならないため。
品の良い地色に染め上げるには豊富な経験が必要です。
地入れと同じように生地を伸ばし、「ガリ」「伸子」「五寸刷毛」を使用します。
着物一反分を染めるには最低でも17m以上の長い染め場が必要になります。
色によってはムラの出やすい色もあり、自由自在に美しく染めるには高度な技術が必要です。
石油系の糊や蝋纈染めの蝋を洗い流す工程です。
洋服のドライクリーニングとは違い、反物専用の機械で洗います。
この工程は設備の整った着物専門の工場(京都)で行います。
友禅染めにて染色した反物を発色・定着させるために行う工程です。
この工程は長い反物を蒸すボイラー設備が整った着物専門の工場(京都)で行います。
特に色の濃い地色は染料を定着させる為に二度の蒸しを行う必要があります。
この工程は⑦の「蒸し」で反物に定着しきらなかった染料を大量の水で洗い流す工程です。
いわゆる「友禅流し」とはこの工程のことを言います。
水道設備の整っていない時代は川を利用していましたが、
水質汚染や生地が汚れるリスクがあるため、専用の長い水槽で洗います。
熱い蒸気を当てながら生地のシワを伸ばす工程です。
この工程も着物・帯ゆのし専用の設備が整った工場(京都)で行います。
反物全体に均等な力で蒸気をかけるには職人さんの熟練された技術が伴います。
染め上がった反物に友禅作家が最後の仕上げをします。
金箔を押したり、金線、銀線を引いたり、墨で柄を描き起こす工程です。
着物、帯に生命を吹き込む仕事です。心を込めて仕上げます。
染め上がった着物・帯の反物を職人さんの手で仕立てます。
当工房では経験豊富な国内の職人さんによる手仕事で仕立てます。